NEWSIS | ソン·テユン 延世大学経済学部教授
掲載 2022.03.08
ロシアとウクライナの戦争が長期化する懸念により国際原油価格が 1 バレル当たり 130 ドルを突破
し、ウォン・ドル為替相場も 1220 ウォンを超えたことにより国内経済に赤信号が灯った。予想水準をはるかに上回る為替相場と原油価格に市場参加者の間では恐怖感も高まっている。為替相場の上昇に加えて 1970 年代のオイルショックの時期を超える最悪の原材料価格上昇の傾向まで重なり、国内経済が景気低迷とインフレが同時に起きる「スタッグフレッション」が再び起こる可能性があるという懸念が出ている。
8 日の金融市場によると、為替相場の急騰や国際原油価格の上昇など原材料価格を発とする物価上昇が拡大する中で景気回復の遅延に懸念が高まり、「スタグフレーション」に対する恐怖感が高まっている。
ロシアがウクライナに侵攻する前は 1 バレル当たり 90 ドル台だった国際原油価格は 1 バレル当たり
100 ドルを突破したのに続き、ついに 130 ドルを超えた。年初までは 1 バレル当たり 100 ドル突破も容易ではないと予想されていたが、「ブラックスワン」(事前に殆ど予想できず、起きたときの衝撃が大きい事象)が現実化するという恐怖感が広がっている。
6 日(現地時間)、ロンドンICE 先物取引所の 5 月物のブレント原油先物価格は前場より 10.24%
高騰した 1 バレル当たり 130.21 ドルで取引を終えた。場中は 1 バレル当たり 130.89 ドルまで上昇
するなど 2008 年 7 月 22 日に記録した場中最高値(1 バレル当たり 133.75 ドル)を上回った。同
日、ニューヨーク・マーカンタイル取引所(NYMEX)で 4 月物のウェスト・テキサス・インターミディエイト
(WTI)の価格も前場より 9.80%上昇した 1 バレル当たり 127.02 ドルで取引を終えた。場中は 1 バ
レル当たり 130.33 ドルまで急騰した。場中高価基準としては 2008 年 7 月 22 日(1 バレル当たり
132.07 ドル)以後の最高値になった。
最近、国際原油価格の高止まりが続いているのは米国の原油在庫減少と景気回復による需要の増加、ロシアとウクライナ間の地政学的なリスクによる供給の支障への懸念によるものだ。ロシアは世界第 3 位の産油国だ。市場では米国と欧州連合(EU)などの西側諸国がロシア産のエネル
ギー輸出に対して禁止制裁をした場合、史上最高値を記録した 2008 年の 1 バレル当たり 140 ドルを上回ると見通している。JP モルガンなど一部ではロシアとウクライナの間の緊張が高まり供給の
不安定が続いた場合、国際原油価格がブレント油基準で 1 バレル当たり最高 185 ドルまで跳ね上がるという見方も出ている。
原油価格以外にも、他の原材料価格もすでに上昇の傾向を見せている。先週 1 週間、欧州の天然ガス価格指標であるオランダの TTF 天然ガス先物価格は 103.92%急騰した。スタンダード&プアーズ(S&P)ゴールドマン・サックス原材料指数も同期間に 20.03%急騰し、関連する集計が始まった 1970 年以降、最も高い週間上昇率となった。
原油や天然ガスなどのエネルギーと穀物、金属など 33 品目の主要原材料現物指数も、先週 1週間で 13.02%上昇した。これは関連する集計が始まった 1960 年以降で歴代最高の週間上昇率だ。
国際原油価格の上昇とロシアとウクライナ間の戦争長期化の懸念などでウォン・ドル為替レートも 1220 ウォンを突破した。7 日、ソウル外国為替市場でウォン・ドル為替レートは前日(1214.2 ウォン)より 12.9 ウォン上昇し 1227.10 ウォンで取引を終えた。為替レートは前日より 4.8 ウォン上昇し
た 1219.0 ウォンから始まり、場中最高 1228.0 ウォンまで上昇した。これは終値基準では 2020 年
5 月 29 日(1238.5 ウォン)以後 1 年 10 ヶ月ぶりの最高値だ。場中高価基準では 2020 年 6 月 1
日(1232.0 ウォン)以後最も高いレートとなっている。
国際原油価格の急騰とドル価値の上昇は輸入価格などに影響を与え、国内消費者物価を引き上げる要因となる。韓国銀行によると、1 月の輸入物価指数は 132.27 で前月比 4.1%上昇した。指数自体は 2012 年 10 月以来 9 年 3 ヶ月ぶりに最高値(133.69)を記録した。
国内消費者物価も 5 ヶ月連続で 3%を記録するなど急上昇している。統計庁によると、消費者物価は昨年 10 月に 3.2%を記録し 3%台を超えて以来、11 月(3.2%)、12 月(3.7%)、今年 1 月
(3.6%)、2 月(3.7%)と記録を更新し続けた。
一方、経済指標は下落傾向を続けて景気悪化の懸念が大きくなっている。今後の景気の流れを予見している 1 月の景気動向指数の循環変動値は 100.1 で前月より 0.1 ポイント下落し、7 ヶ月連続で下落している。
辛うじて赤字から抜け出した貿易収支も再び悪化する可能性が高い。産業通商資源部によると、今年の 2 月に韓国は 539 億 1000 万ドルの輸出額を記録した。エネルギー価格の急上昇により
輸入額も 530 億 7000 万ドルと集計され、8 億 4000 万ドルの貿易黒字を記録した。貿易収支
は昨年 12 月と今年 1 月の 2 ヶ月連続で赤字となって以来 3 ヶ月ぶりに黒字に転じたが、最近で
は原油価格が 1 バレル当たり 130 ドルを突破するなど、エネルギー価格の急騰で再び赤字に戻されるという懸念が生じている。
韓国は経済協力開発機構(OECD)加盟国の中では原油依存度が最も高く、原油価格の上昇が物価など実物経済に与える影響が他の国よりも大きい。国際原油価格がすでに天井を突き抜けた中、為替レートが上昇しながら原油の輸入単価が上昇し、国内企業の費用負担が大きくなるものと予想される。国際金融センターは、ロシアのウクライナ侵攻により世界中のエネルギー価格が 10%上昇した場合、今年の韓国の経済成長率は 0.17 ポイント悪化し、消費者物価は 0.24 ポイント上昇すると予測した。
これにより、1970 年代のオイルショック当時の様にインフレと急激な景気悪化が同時に起こる「スタグフレーション」が起こるという予測がされている。世界経済は 1970 年代半ばと 1980 年代前半の
2 度のオイルショックによりスタグフレーションを経験した。
延世大学経済学部のソン・テユン教授は「韓国経済は既にスタグフレーションがかなり進行していると見られる」と述べ、「原油などエネルギーを中心に原材料価格が急激に上がっており、中間材もともに値上がりしており、インフレが加速している」と述べている。
ソン教授は「原油価格などのエネルギー価格の上昇は海外要因だから国内ではコントロールが難しく、それ自体が韓国を含む他国の金融市場に不安要因として作用している」とし「経済成長率自体はある程度出ているが、前年が低かったことによる根底の効果によるもので、実際の国民が体感する経済成長率などの経済指標はむしろ悪化している」と述べている。
ロシアとウクライナの間の戦争の継続はグローバルサプライチェーンのリスクを高めて、低成長の中で物価が上昇する「スローフレーション」の不安も高まり始めている。
現代経済研究院経済研究室のチュ・ウォン室長は「欧米諸国のロシアに対する制裁とロシアへの対立でグローバル貿易が縮小され、原材料価格の急上昇が続く見通し」とし「これにより韓国の輸出経済が下落し、原材料価格の上昇により国内の物価が上昇圧力を強く受けながら消費心理を萎縮し、国内市場の低迷を誘発しかねない」と述べた。
チュ室長は「ロシアとウクライナの間の戦争に伴う波及の影響に伴い韓国経済がスローフレーションになる可能性を排除することは難しい」と懸念した。
一方、世界経済の原油価格への依存度は以前に比べると低くなっており、輸出も堅調であり、にスタグフレーションが現実化する可能性は低いという見方もある。
ハイ投資証券(Hi Investment & Securities Co., Ltd.)のパク・サンヒョン研究員は「国内消費者物価上昇率は 5 ヶ月連続で 3%台の高い伸びを示しており、先行指数も明らかな減速を見せるなど、景気減速のリスクが可視化されている」と述べ、「韓国は原油高の状況に対して最も脆弱な国であることを考えると、ウクライナの状況が負担になるリスクではあるが、米国など主要先進国の好景気とともにエンデミック(風土病)的な需要の勢いが韓国の輸出経済にプラスの影響を与える可能性がある」と予測した。
パク研究員は「半導体などの IT 業況の復興の可能性と、第 2 四半期から本格化されるエンデミックの局面への転換に伴う内需の好景気は、国内の景気低迷やスタグフレーション突入を防ぐ役割をするものと期待される」とし「ただ、国内経済の観点からは、ウクライナ情勢の長期化が最大の要因になるだろう」と述べた。
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